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日記ではなく。物語り。
 いや、まぁ日記も物語りではあるんだがー。


 ともあれ。


 久し振りに、このブログでも言葉の創作を叩きつけてみようかと。

 別の場所で書いた小説っつーほどのもんでもなく、まぁ昔話みたいな創作なんだけどもね。そいつにちょっと手直しを加えたもの。

 ギャグでも、エロイ話でもないんだけど、それでも読んでみようかっつー人は、下のMoreをクリック。って、この機能、初めて使うわー。もあー。



 むかしむかしの物語。

 四方を海に囲まれた、南方の小さな島々からなる王家には、7人の美しいお姫様がいました。上の姉から、6番目の姉姫達は、それはそれは美しい純白の翼を生やしており、白羽根様、天女様と、人々から親しまれ、慕われています。

 しかし、末の姫様の翼だけは、なぜか夜の闇のような、深い闇の色をして生まれてきました。細くしなやかな肢体に、くるぶしまで伸びた黒髪の、暗闇でも浮かび上がるような美しさを持ちながら、不吉な黒い翼のため、人々は末姫だけを黒羽根(くろばね)の剣と、密かに影で言われるようになりました。

 6人の姉姫たちが、次々に婿を迎えて行く中で、末姫だけはいつまで経っても1人ぼっち。海を臨むお城の自室で、寂しく空を見上げる日々が続きました。

 姫の父上も、そんな末姫を不憫に思い、幾度となく縁談を持ってこようとしたのですが、どの相手も、末姫の吉凶の黒い翼を気味悪がって、直接に姫と会おうとすらしません。 気をもむ父に、決まって姫は微笑んでこう言います。

 「お気になさらないで下さいまし。私、この夜空のように黒い翼を、気に入っております」

 しかし父である国王は知っていました。月のない晩に、姫が人々に忌み嫌われていることを嘆いて涙をながしている事を。そのため、姫の気丈な笑顔は、国王の瞳には泣いているようにうつるのでした。

 そんなある日。

 南の方角から、空と海を喰らいながら、大きな龍がやってきました。龍は自らを忌蛇長尾(いだなび)と名乗り、この平和な島々をも喰らい尽くすと宣言しました。

 尾が見えぬほど巨大な忌蛇長尾は、少しからだを震わせるだけで雷を落とし、風を巻き上げ、海を荒れ狂わせ、一口で一つの島を平らげました。

 何人もの勇敢な戦士が、青銅の鍛えぬかれた武器を持って挑みましたが、誰一人として、忌蛇長尾の固い鱗にはばまれて、傷一つ残すことなく命を落としました。

 このままでは、国が食い尽くされてしまうと、王は忌蛇長尾に どうにかこの国を喰らうのをやめてはくれまいか と頼みました。代わりになにか美味い物を食わせてやるから。と。

 島々の周りをぐるりと3回ほど飛び回った忌蛇長尾は、王に言いました。

 「では、お前の娘達のうちから、1人を我に喰らわせよ」

 忌蛇長尾は、王がこの要求に応えられぬと知りつつ、敢えて要求を突きつけました。もちろん王は、即座にこの要求を断りました。愛する姫達の誰一人として差し出すつもりはありません。

 「ならばこの国を喰らい尽くすだけだ」

 言うなり忌蛇長尾は、その大きな口をあけ、王のいる島ごと喰らおうとしました。

 その時。

 「邪なる大蛇よ、御主の喰らいたい姫はここにおるぞ」

 島の南端。絶壁の上に、黒羽根の剣、末の姫が忌蛇長尾を見上げて声を上げました。吹き荒れる強風で、黒髪と翼が大きくたなびきます。細い姫の体は、そのまま空に吸い込まれていってしまうのでは、と思うほどに頼りなげですが、その声は強く、芯が通っています。

 「今宵、再びこの場所へ参られよ。そこで存分にこの身体を味わうが良い」

 姫の気迫に気おされたのか、申し出に満足したのか、忌蛇長尾はぐるりと巨体を捻らせ、南の空へと消えて行きました。「今宵、喰らうぞ」という、深い声を残して。
 災いが去ったとはいえ、それは一時のこと。夜になれば、忌蛇長尾は必ずや再び姿をあらわすことでしょう。しかし、王はそのことよりも、末の姫の申し出に困惑しました。申し出通りにすれば、姫は忌蛇長尾に喰われてしまい、申し出を無かったこととすれば、国が滅びてしまいます。

 困惑し、狼狽する父に、姫は優しく語りました。

 「今宵、あの崖に奴が表れるのを、夜空の星にまぎれて待ちます。そして、私がいない事に苛立っている隙に、この身体を刃に変えて、忌蛇長尾を打ち果してご覧にいれましょう」

 しかし、それではお前の命が無い。と、頑なに引きとめようとする父を制し、末の姫は続けます。

 「忌み嫌われた、吉凶の羽根を持つ私を育ててくれた父上と、この国に報いいるためならば、私のこの命など、この羽根のひとひらのように軽いものでございます。この黒い羽根ならば、見事に夜空に紛れて、あの龍を欺いてご覧に入れましょう」

 言い終えると、末の姫は空へと羽ばたいていきました。

 忌蛇長尾が雲を吹き飛ばして行ったため、夜空には満天の星空。夜更けに、再び雷と嵐を伴って現れた災いの龍。高貴な血につらなる者を喰らうことが出来ると、上機嫌でやってきました。しかし、崖の上に姫の姿がないことに気付き、怒りに身体を激しく震わせて暴れ狂い出した。

 雷鳴が、嵐が、そして地鳴りまで引き起こすほどの怒り。その怒りにまかせて、国を丸ごと飲み込んでしまいかねない勢いです。忌陀長尾が大口を開き、まずは突端の崖からかじりつこうとした、まさにその時。
 その時を待っていたかのように、星の海から、一筋の赤い光が矢のように鋭く落ちてきました。それは真っ黒な剣に姿を変え、炎に全身を包んだ、黒羽根の姫。

 剣にその身を変えた姫は、どんな武器をも弾き返した、忌蛇長尾の眉間の鱗を突き破り、見事一刀の元に災いを振り払ったのでした。最期にひときわ大きな雷と、激しい風を巻き起こし、南から来た龍は討ち果たされたました。龍の最期の鳴き声は、7日7晩こだまするほどに壮絶なものでした。

 未曾有の嵐の後、崖の上には一振りの剣が残されていました。

 その剣こそ、この国を護るために、己の身を刃として災いに立ち向かった末の姫君そのものでした。人々に忌み嫌われながらも、その命を炎と燃やした黒羽根の姫は、もう二度とは元の姿に戻る事はありませんでした。

 龍を倒したこの剣が、元は国を愛した美しい姫だった、ということを知るものは、父である国王や姉姫達、姫に命を救われた国民たちを含め、いつの日かはいなくなることでしょう。
 けれど、この龍を倒した剣の物語りは、永遠に語り継がれることであろうと、国王は信じました。そこで、災いを討ち果たし、力を使い果たしたためか、黒い刀身は白くなっていましたが、純白に輝く剣に、敢えて黒い翼の姫を偲んで、黒羽根の姫の鉱物として 黒金 (くろがね)と名づけることとしました。
 剣のささった崖から採掘された、青銅よりも固い、この剣と同じ硬さを誇る金属を、まばゆい金のごとき美しさの娘を失った王は 鉄 と名づけ、その文字に くろがね という音を与えましたとさ。

 常にその輝きの美しさの中に、姫の姿がありますように。と願いを込めて。





 おしまい。
by 417sakura | 2007-01-08 12:08 | その他
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